あなたに、キスのその先を。
(申し訳ないのは私のほうなのですっ)

 それは、父や健二(けんじ)さんのお父様から塚田(つかだ)さんへじきじきに何らかの申し入れがあったということだと思うから。
 きっと、私がそれだけ頼りないと思われている証拠に違いない。

「あの、私のほうこそ何だかすみません……」

 ここに入ってきたのだって、自分の実力ではなく、いわゆるコネだ。お父様はくわしくは言って下さらなかったけれど、多分、議員をなさっている神崎(かんざき)さん――健二さんのお父様――のお力添えに違いない。

(組織の中に入ってからも、人の手をわずらわせるような扱いしかされない私って本当情けないのですっ)

 そう思いながらしゅん……として謝った私に、塚田さんが「一旦席にもどりましょうか」と言って挨拶回りを中断する。

(まだ、計画係と管理係に行けていないのに……)

 そう思うと、自分の不甲斐(ふがい)なさが悔しくてたまらなかった。
< 12 / 358 >

この作品をシェア

pagetop