あなたに、キスのその先を。
「仕方ないですよ。あの時キミはまだたったの四歳でしたから」

 修太郎(しゅうたろう)さんと私の年齢差は十三歳。とすれば、当時彼は十七歳だったということで。

 年齢のお話になった途端、修太郎さんが申し訳なさそうなお顔でうつむかれた。

「気持ち悪いですよね。十七の男が四歳の女の子に心奪われてしまった、とか……」

 それは世間的にはロリータコンプレックスとか幼女趣味だとか言うのだと思ってしまって、修太郎さんはずっとその気持ちを封印し続けていたのだとおっしゃった。

「それに、どんなに可愛い、好きだ、と思っていても、日織(ひおり)さんは健二(おとうと)許婚(いいなずけ)だ。僕にどうこうできるものではないと自分に言い聞かせていました」

 お二人のお父様でいらっしゃる神崎(かんざき)天馬(てんま)氏は、修太郎さんが七歳(ななつ)の頃に、健二さんのお母様でいらっしゃる宮美(みやび)さんと再婚なさったそうで。

 修太郎さんはその少し前に離縁された実母の絢乃(あやの)さんとともに生家を出たかったけれど、大事な跡取りということで、許してはいただけなかったらしい。
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