私のおさげをほどかないで!
「なぁ凜子(りんこ)。――髪、ほどくぞ?」


 奏芽(かなめ)……さん?

 あ、れ?
 私、いつの間にベッドに移動したんだろう?

 見上げると、私の上に馬乗りになった奏芽さんが、私のふたつ分けの三つ編みをいじりながら意地悪く問いかけてくるの。


 その姿は、何故だか私の知っている奏芽さんじゃない気がして。

 その証拠に私の心も、何で〝大嫌いなこの(ひと)〟にそんなことを許さなきゃいけいの?って思っていて。


 え? 大嫌いな――?


「こっ、このままでも……! っていうか、出来ればど、どこにもっ……さわらないで……欲しいですっ」


 その心が私の意思を置き去りにして、そんな言葉を言わせて。

 私は心の中でどういうこと?って自問自答する。


 でも奏芽さんが私の知っている彼じゃない以上、そうなるのは必然で。

 きっと奏芽さんから香るシャンプーのにおいがいつもと違うから。

 だから落ち着かないだけなんだ。
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