私のおさげをほどかないで!
「なぁ凜子(りんこ)。だったら……。身内以外で見たことあるの、俺が初めてだって思っても……いい?」


 編み込んでいたのを解いたばかりで、ゆるりとウェーブのかかった髪の毛を一房持ち上げて、再度愛おし気に口付けてから、奏芽(かなめ)さんが私の目を見つめてきて。


 私は、そのどこか嬉しそうに細められた視線に、何だか分からないけれど無性に照れ臭くなってしまう。


 子供の頃に男子に引っ張られてほどけてしまって、慌てて結んだけれど汚くて……お母さんに叱られたことがある。あの時はうまく結べなかったけど、一応ほどいたままいたわけじゃないし、ノーカウントでいいよね。


「……はい」

 貴方以外には見せたこと、ありません。

 照れ隠しに、奏芽さんの胸元に額を擦り付けるようにしてそうお返事したら、「やべ。俺、今すげぇ、嬉しいんだけど」って、ギュッと抱きしめられた。


「凜子のこんな姿見られんの、これから先も俺だけの特権、な?」

 言われて、私は2人して裸なままなのにも気がついて……。
 今更のようににわかに恥ずかしくなる。


「はい……。か、奏芽さんだけ、です」


 こんな風に無防備に裸をさらしてしまえるのも、髪を綺麗に結いあげていない姿を見せてしまえるのも……。

 全部全部奏芽さん以外には考えられません。

 今も、これから先も……ずっと――。
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