私のおさげをほどかないで!
***
そう。私はいま、その魔法使い……もとい奏芽さんと一緒に、横並びでタクシーの後部シートに座っている。
バスに乗り遅れた私を助けるという名目で同乗してくれている奏芽さんに、大学まで相乗り?で送ってもらっている最中だ。
乗り込んだら執拗にあの夜のことについて言及されるのかな?なんて少し覚悟をしていたのに、案外なにもリアクションを起こされないことに逆にソワソワしながら――。
「あ、そうだ、凜子。ゴム」
結局あの夜、逃げるようにいなくなっちまったから返しそびれたじゃねぇか。
わざとらしく恨めしげな顔をして言う奏芽さんに、でも今朝出会ってからこっち、ヘアゴムのことが話題に上がっても返そうとしてこなかったじゃない、って思ったりして。
今このタイミングでそれを返してきたのだって、きっと奏芽さんにとっては計算づくの動きなんだ。
勝手にそんな風に思いながら、無言でヘアゴムを受け取ってポケットにねじ込んでから、奏芽さんをチラッと見たら「ん?」って見つめ返された。
初めて出会った瞬間からずっと、おかしな行動をしてきたのは彼なはずなのに、何だか私の方が挙動不審みたいになってしまってるの、何だか納得いかないんだけど。
そう。私はいま、その魔法使い……もとい奏芽さんと一緒に、横並びでタクシーの後部シートに座っている。
バスに乗り遅れた私を助けるという名目で同乗してくれている奏芽さんに、大学まで相乗り?で送ってもらっている最中だ。
乗り込んだら執拗にあの夜のことについて言及されるのかな?なんて少し覚悟をしていたのに、案外なにもリアクションを起こされないことに逆にソワソワしながら――。
「あ、そうだ、凜子。ゴム」
結局あの夜、逃げるようにいなくなっちまったから返しそびれたじゃねぇか。
わざとらしく恨めしげな顔をして言う奏芽さんに、でも今朝出会ってからこっち、ヘアゴムのことが話題に上がっても返そうとしてこなかったじゃない、って思ったりして。
今このタイミングでそれを返してきたのだって、きっと奏芽さんにとっては計算づくの動きなんだ。
勝手にそんな風に思いながら、無言でヘアゴムを受け取ってポケットにねじ込んでから、奏芽さんをチラッと見たら「ん?」って見つめ返された。
初めて出会った瞬間からずっと、おかしな行動をしてきたのは彼なはずなのに、何だか私の方が挙動不審みたいになってしまってるの、何だか納得いかないんだけど。