私のおさげをほどかないで!
「アガパンサス?」

 奏芽(かなめ)さんがつぶやくのへ、「薄紫色の花です。和名は紫君子蘭(むらさきくんしらん)紫陽花(あじさい)みたいに小さな花が茎の先に密集して丸く咲くんです。立ち姿は彼岸花(ひがんばな)に似てる……かなぁ」と答えたら「凜子(りんこ)、花好きなの?」って聞かれた。

 特別好きと言うわけではないけれど、そういえば人よりは詳しいかもしれない。

「そうですね。意識したことなかったですけど……割と好きなのかもしれないです」

 幼い頃から道端に咲いている花の名前が気になって、図鑑でよく調べていた。そうしているうちに自然と花の名前について、人よりは詳しくなった。
 好きと言ってもその程度。

「あー、これか。見たことあるわ」
 奏芽さんも割と知的探究心が強いタイプなのかもしれない。
 スマホですぐに調べてみたらしく、「これだろ?」って私に画面を見せてくれた。

 私はそれに小さくうなずいた。

 まぁお医者さんになるぐらいだもんね。
 こんな見た目だけど……きっと頭もいいんだろうな。

 奏芽さんの、外見からは少しかけ離れたところを見つけられた気がして、少しだけ嬉しく感じて。
 そう思ってしまったことに、またしても戸惑った。
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