見つかった探しもの、見つからない気持ち【優秀作品】
「えっ、スマホ失くしたの? で? 見つかった?」

小西くんは、心配そうに駆け寄ってくる。

「ううん、なくて……。職員室にも届いてないし……」

私は事情を説明する。

すると、小西くんは、しゃがんで机の下を見回してくれる。

けれど……

「落ちては、なさそうだなぁ。ちょっと鳴らしてみるよ。番号教えて」

そう言って、小西くんは自分のスマホを取り出した。

そっか。
お互い、クラスのグループLINEには入ってるけど、友達追加してないから、LINEじゃ掛けられないんだ。

私は、電話番号を小西くんに伝える。

小西くんが言われた通りに番号を押して通話ボタンを押すと、すぐにどこから微かにバイブ音が聞こえてきた。

私たちは顔を見合わせる。

「どこだろう?」

そう呟いた小西くんは、音をたどってゆっくりと歩き始める。

私もその後に続く。

そして、教室の前方、右隅の電子黒板(テレビモニター)の前で足を止めた。

「あった!」

小西くんは、電子黒板のすぐ下にある台を指差した。

そこには、リモコンと一緒に綺麗に並べて私のスマホが置いてある。

「ほんとだ!」

私はすぐにそれを手に取った。

「きっと、誰かが拾って、ここに置いておいてくれたんだよ。床だと、誰かが踏んで壊すかもしれないし、落としたことに気づいて取りに来るに違いないと思って」

そっか。

私たち、ずっと下ばかり見てたから、拾って上に置いてあるものに気づかなかったんだ。

「小西くん、ありがとう」

私は、スマホを両手で握りしめてお礼を言う。

「いいよ。これくらい。さ、俺も忘れた問題集持って帰ろ」

そう言うと、小西くんは自分の席に行って、引き出しから数学の問題集を取り出した。

「宿題出てるの忘れて、うっかり置き勉しちゃってさぁ」

照れ臭そうに笑いながら、問題集をリュックに入れた。

小西くんは、普段はおちゃらけてるように見えるけど、でも、宿題はちゃんと自分でやるし、テスト勉強もちゃんとやってて成績もいい。

明るくふざけてる子は、人のノートを写してばかりで努力をしない子が多い。

逆に、ちゃんと努力をする子は、真面目な優等生タイプが多い。

その両面を持ってるところが、とても素敵だと思うの。

私は、自分の気持ちを再認識しながら、こっそりと彼を見つめた。

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