ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 引っ越し初日に子供の出生について明かそうと意気込んでいたのに、蒼さんとゆっくりふたりきりの時間を過ごせないまま。いい加減きちんと伝えなければいけない。

 今日は朝から蒼斗が三十七度六分の微熱を出していて、念のために保育園を休ませた。融通の利く職場で助かっている。

 蒼さんの帰りを待つため深夜まで起きていようと、蒼斗と一緒に昼寝をした。

 ふたり同じタイミングで起き、蒼斗の機嫌がいいうちに夕食の下準備をしようとキッチンに立つ。

 調理しているあいだ蒼斗をリビングで自由に遊ばせていたのだが、ドンッという鈍い音と共に泣き叫ぶ声が響き渡った。

 何事かと駆け付けると、リビングテーブルとソファの間にへたり込んだ蒼斗の頭部から大量の血が流れている。

 ひゅっと息を呑み、まともに息ができないまま蒼斗に触れる。

 さっきソファによじ登って遊んでいたから、落ちた際にテーブルの角でぶつけたのかもしれない。

 急いでタオルを持ってきて傷口を抑えながら、泣きじゃくる蒼斗を抱きかかえてどうにか落ち着かせる。

「いたいいたい!」

「痛いよね、ごめんね」

 ひとりで平気だろうと目を離した私のせいだ。

 ショックで涙が溢れそうになったが、私が泣いても状況は悪化するだけ。
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