ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「大切なものなのに、そんなに乱暴に扱ったら折れ曲がるだろう」

 フッと優しく笑った顔は三年前となにひとつ変わらない。変化があるとすれば、短く切りそろえられていた黒髪がかなり伸びたところだろうか。

 額が露わになったアップバンクスタイルのおかげで、三十五歳という年齢に相応しい色気が増している。

 それに対し二十九歳になった私も、昔とはだいぶ印象が変わっているはずだ。

 大好きだったアクセサリーはひとつも身に着けず、腰まであった自慢の長い髪もバッサリ切り、缶のプルタブを起こすのが難しいほど長く伸ばしたネイルもやめた。

 アクセサリーは蒼斗に引っ張られるし、長い髪はいろいろな場面で邪魔と感じる。

 長い爪はやわらかな子供の肌に食い込みそうで不安だからやめたのだけれど、息子が快適に過ごせることで私も満足感を得られるし、とくに不満は感じていない。

「傘を交換しようか」

 私がさす傘の上に蒼さんは傘を重ねる。

 それから私が持っている柄をさらって傘布を閉じると、数歩下がってから自分のものをさした。

 おかげで私と蒼斗はまったく濡れていない。相変わらず紳士的な人だ。

「あ、ありがとう」

 どうにか絞り出した声は情けないほど上擦っている。
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