一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい

真実

「お休みありがとうございました。お土産置いてあるので食べてくださいね」

「ありがとね。あれ?ちょっとー、夢の国のお土産?誰と行ったのよ。誰もいないって言ってたじゃない」

「あ……うーん。そうですねぇ」

私は聞かれてドキッとしてしまい歯切れの悪い返事になってしまった。
みんなはそれを読み解き、ニヤニヤしながら噛んだ話を聞くわよ!と言われてしまう。

私が気になってるだけで、正直冬哉さんはなんとも思ってないと思う。
気の合う友達、というカテゴリにいるだけだろう。

こうして会話を交わすたびにもっと近づきたい、もっと会いたいと私の中で冬哉さんへの想いがつのる。
でもどうしたら友達以上になれるのかわからない。
友人宣言をされた以上、もし告白をしたら友人でもいられなくなるだろう。
正直なところ冬哉さんのことを知れば知るほど今の距離感はもどかしく感じる。
こんなことを考えている私のことを冬哉さんはどう思うんだろう。
友人として思われていなかったら今の関係は終わってしまうだろう。
そう思うと一歩踏み出せずにいる。

はぁ……
ため息が漏れる。

冬哉さんとは朝も約束をしているわけではないからいつ来るのかもわからない。
偶然以外会えない、そんな関係。

たまに誘ってくれるランチに私はホイホイとついていくだけで自分からは誘うことさえできない。

情けないけど今の関係を崩すことになってまで自分の感情を言いだすだけの勇気はまだない。

こうして悩んでいる暇なんてなかった、と我に返り溜まったレセプトのチェックをする。
夏休み中は順番で他のクラークがみてくれるが、それでもやっぱり仕事は待ってくれずに溜まってしまう。

頭を切り替え仕事に没頭した。
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