冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 なんということだ。だとしたら、成優ちゃんは俺の娘だということになる。あの、無邪気で小さくて愛らしい成優ちゃんが……。

 噛みしめるようにそう思うと、胸に熱いものがこみ上げる。

 しかし、芽衣はどうして俺になにも告げず、まるで逃げるように離れていった?

 当時のことを回想し、ひとつだけ思い当たることがあった。

 別れの手紙の中で、芽衣は母のことを案じていた。あれは彼女の優しさなのだとばかり思っていたが、芽衣自身が、母の言動に危険なものを感じていたからなのではないだろうか。

 だとしたら、芽衣はどんな思いであの手紙を……。今すぐ彼女に確かめたい。

「彼女はまだ学園内にいるでしょうか?」
「いや、娘さんのお迎えがあるんで、もう出てしまった可能性の方が高いかと」
「わかりました。では、私はこれで失礼します」

 踵を返して足早にその場を去る。すると草野が追いかけてきて俺の肩を掴んだ。

「ちょっと待った」

 まだ、なにか用が?

 急いでいるのでつい迷惑しそうな視線を投げかけると、草野は肩をすくめる。

「そんなに怖い顔しないでください。保育園の場所、知らないでしょう。スマホ貸してください」

 草野は俺が無表情で差し出したスマホのマップを操作し、保育園の位置と芽衣が急いでいる時に使うのだという近道を教えてくれた。

「頼みましたよ。観月先生のこと」
「あなたに言われなくても」

 俺が冷たくそう返すと、草野は「観月先生、どうしてこんな意地悪な人がいいんだろう」と苦笑していた。

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