4人のお兄ちゃんは王子様!?
≪榊side≫



後ろに大雅が付いてきているのは気づいていた。

でも結衣の友達も一緒だったなんてな…。






真「なぁ。結衣大丈夫なのか?」

紗「これ病院連れて行った方がいいんじゃね?」


心配している彼女らに答えるように意識が無くなったように見えた結衣はゆっくりと目をあけた。


結「だ、大丈夫…。」

声の調子からしてだいぶ辛そうだ。



大「無理すんなって…。とりあえず榊…結衣を病院に連れて行ってくれねぇか?俺バイクだし…。」

真「ならうちがバイク運転してってやるから大雅結衣についてあげろよ。そっちの方が結衣も安心だろ。」

紗「うちらニケツしてきたからちょうどいいしな!」


こんなに心配してくれる人がいるなんて…。

このヤンキーたちも結構いい奴じゃねぇか。


大「サンキュー。俺も同乗していいか?榊。」

榊「あ、あぁ。は、はい。承知いたしました。」

真「じゃあ、榊さんとやら…結衣をよろしく頼んだ!」

大「お前らも心配してくれてありがとうな。」

紗「あったりめーだ!結衣はうちらの親友だからな!」


羨ましい。

これが本当の友情というものなのだろう。

俺は本当の親の顔も知らない。

ましてや今まで友達も作ることすらしなかった。



なんでこんなにも…か弱く、小さい小娘に出来て俺には出来ないんだろう。


そんな事を考えているとパッと結衣の笑顔が頭をよぎった。


……そりゃそうだ。

むしろこんなに気のいいやつ放っておくような奴らの方がおかしいのだ。


って何考えてるんだ、俺は。










着いたぞ。


大「ありがとう!じゃあ…結衣を運んで…」

大雅が言いかけた時だった。

結「大雅兄…気持ち悪い…。」

結衣が顔を真っ青にしてそう訴えた。



すると大雅は事前に用意していた袋でそれを受け止める。

背中をさすりながら

大「大丈夫。辛いな。すぐに楽になるからもう少し頑張れな。」

そう声をかけている。


勝てっこない。

こんないい奴に。



男の俺から見ても大雅はいい男だし…

それに気も使えるし、一途で優しい。







馬鹿馬鹿しい。

こんな小娘に少しでも惚れてしまった自分が。


こんなかっこいい奴に少しでも勝てるのでは、と思った自分が。



この家族の元で働いてから俺の人生全てが狂ったんだ。

この家族と出会わなければこんな未熟な小娘に恋をしたり、そしてその兄である彼に嫉妬したりしなかった。


この家族に出会わなければ俺がこんな人間らしい感情を抱くことすらなかったんだ。



俺は今までロボットのように生きてきた。

なんでも主人に従ってその通りにしていればいい。


ずっとそう思っていた。


むしろその方が楽だった。


自分の意見なんて持たない方が楽だった。



それなのに…。それなのに…。





どうして俺はこんなにもモヤモヤした感情に陥っているのだろう。


恋している人たちはいつだって輝いていると思っていた。

でも実際違った。



恋とか愛とか…

全然輝いていなかった。



だって俺はこんなにも苦しいから。

こんなにも辛くてしょうがないから。


こんな感情…こいつらに出会っていなければ一生知ることも無かったんだろうな…。





大「榊、じゃあ一緒に結衣を運んで…」

榊「いや、大雅様が結衣様を運んであげてください。私はこれで帰ります。」

大「結衣と話していた時とだいぶ口調が違うな。まぁいい。俺が結衣を連れて行く。」


大雅は少し怒ったような口調でそう言うと結衣をおぶって病院の中に入っていった。



怒るのも当然か。

多分結衣は大雅と出かけていたとしたらこんな熱中症になんてならなかった。

俺の配慮が足りなかった。

楽しそうに遊んでいる結衣の姿がとても可愛らしくもっと見ていたい…そう思ってしまっていた。


それなのに車で運んですぐ逃げようとしている俺なんて…。


クズ同然だ。



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