『request』短編集
「あ…」
浅川くん。
震える声で
再度その名前を呼ぼうとした、が。
「浅川~ まだいる?」
タイミング悪くその教室に同じクラスの男の子がやって来た。
「あ、いたいた。せんせーが呼んでたぞ」
「うん。分かった」
私は二人の会話を聞くまでもなく
「ごめん、綾瀬さ……あれ?」
「綾瀬ならなんか走ってったけど」
「……、…そう」
浅川くんが私の姿が無いことに首を傾げていることも知らず、私は何度も何度も作り直したカップケーキを握りしめて無我夢中に走っていた。