宛先不明ですが、手紙をしたためました。
3通目_.・*…〆

最愛の差出人




中学2年の春頃には、私は健太くんと話さなくなっていた。

話さなくなった、そのきっかけは何だったのだろう。

授業中、彼を盗み見た時に、ふと考える。

中学校に上がって直ぐは、小学校の名残があって、まだちょっかいをかけられていたように思ったけど。

私が何かしてしまったのだろうか。

これは、覚えていないのではない。

本当に、心当たりが無い。

今では数日前のように話し掛けたら、ちゃんと返してもらえる。

だから、別に避けられている訳ではないと思う。

階段から落ちそうになった時だって、助けてくれて、心配までしてくれた。

話さなくなった、そのきっかけは一体なんだったんだろう。



「プリント、1人1枚取って、後ろに回して」



現代文の教師が、列ごとにプリントを渡していく。

健太くんがプリントを後ろへ回した時、ぼうっと眺め続けていた私と目が合った。

しかし、その視線は一瞬で逸らされる。

私も慌てて、顔ごと逸らした。

最近、私はやっぱり可笑しい。

目が合ったくらいで「恥ずかしい」なんて感情、今まで一度も湧き上がったことなんて無いのに。



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