宛先不明ですが、手紙をしたためました。
4通目_.*・〆

たいせつな気持ち




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見覚えのある小さな小学校の校庭に、幼い女の子と男の子が2人いる。

その2人の容姿には、見覚えがあった。

はじめ、ぼやけていた顔も、靄が晴れていく様にくっきりと見える。

女の子は、小学生の私だ。

その時点で、よく分かった。

――ああ、これは夢だ。

男の子の方は、健太くんで間違いない。



『ブス!』



唐突に、健太くんが言った。

このような時、当時であれば周囲には、たくさんのクラスメートたちが行き交っていて、大概の男子たちは同調し ていた。

そして、女の子たちは常套句のような「やめなよ! 男子」を叫んでくれた。

しかし、今は2人きりの世界。

誰も間に入ってくれる子も居ない。

けれど、夢の中の中は、一切怖じ気付くこともなく。

『健太くんなんて嫌いだも――』

私が言い切るか、どうかという所で風景は途切れる。

まぶたがそっと上がり、広がる景色は黒板の板書する先生の背中が見えた。

生徒たちが、規律正しく正面を向いている。

そして、黒板に板書をする先生の手がぴたりと止まった。

くるりと振り返ったかと思うと、私に視線が落ち着く。



「では、この問題を栗山。このときyに当てはまる答えは?」

「へっ?!」


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