宛先不明ですが、手紙をしたためました。

過剰な表現




私が健太くんのことを「好き」だと気付いてしまった、その日から明らかな違和感が私に付き纏っていた。

私が健太くんのことを正面からは見れないくせに、後ろ姿や横顔を自然と追いかけてしまうこと?

いや、それは違う。

今に始まったことじゃない。

それとも、休み時間になると、楓が私の背後に立って、ずっとニヤニヤしていること?

いや、それも違う。

胸の内がザワザワするけど、それこそ今に始まったことではない。

周りを見渡しても、生徒達はいつも通りで、何も変わりは無い。

この教室で、健太くんに大胆に頬を撫でられた時、多くの視線を感じた。

だからと言って、その後、冷やかされた訳でも、嫌がらせがあった訳でもなかった。

今も特段、何かがある訳でもなく、至って平和だ。

では、この確かに纏わり付く違和感の正体は、一体何なのだろう。

私は、そればかりを気にして、真相を突き止めようとしていた。


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