宛先不明ですが、手紙をしたためました。
5通目_.*・〆

後先を考えてつくる筋道




「栗山さん。さっきの授業のノート、写させて。書いてる途中で黒板、消されちゃってさぁ」



昨日、あんなことがあった後でも、私の元へまた飄々とやって来て、そんなことを言う。



「海藤くん」



相変わらずだね、とか。

もう少し頑張ってみても良いんじゃないかな、とか。

私も言ってしまえたら、良いんだけど。

生憎、そこまで私は肝が座っていないから、まともに相手をしてしまう。



「はい。どうぞ」



私の黄色のお気に入りのノートを、すんなり渡した。

それにありがとう、と海藤くんは一言だけで席へと戻っていく。

不安が募るまま、私はうつ向いた。

すると、それと入れ違いで楓の明るい声が耳に入ってくる。



「やっと日本史、終わったー。漢字ばっかり、もういいよ!」

「まぁまぁ、いつか役に立つ、って」

「本当にー?」



楓を諭していると、突然、表情が真剣モードに切り替わった。



「それより、華世、さっき海藤と喋ってなかった?」

「ああ、板書写すの、間に合わなかったんだって。ノート貸しただけだよ」

「なるほど。いつもの事ね」

「そう、いつもの事」



笑って返してみたが、楓の表情はまだ堅いままだ。



「ど、どうしたの?」

「華世。最近は、あいつに何もされてない?」

「……っ」



思わず、馬鹿正直に固まってしまう。

昨日の迫られたことを話しておこうか、と悩んだ。

実際、怖かったのだが、その件に関しては健太くんが助けてくれて、一件落着したのだから、もう良い気もしてしまう。


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