記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「行ってらっしゃい」
「行ってきます。」
玄関の扉の前まで見送りに出ていた私の額に紫苑は当然のことのようにキスをする。
「気を付けて。くれぐれも」
「無理はしない」
「そう。何かあったら」
「連絡する」
最後の最後まで確認事項を怠らない紫苑。

私はふいに口づけられた額がやけに熱く感じているのに。
紫苑にとってはあたりまえすぎて何も感じないのか。

そんなことを考えながら彼に手を振る。
「外は寒いから。扉はすぐに閉めるから。すぐ部屋に入って体冷やさないように。」
「はい」
「じゃあ。」
彼は玄関の扉を開けると、冷気が入らないようにとすぐに扉を閉めた。
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