記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
「赤ちゃんが苦しくなっちゃうな。」
彼はしばらくしてから体を離して、私の涙を拭い、微笑みかけてくれた。

その瞳の奥で、彼も泣いていることに気づくのは、”私の中の私”が教えているのだろう。



「何か食べられるか?食べられそうなもの作ってみた。」
「・・・」
彼の悲しみを包み込むことは今の私にはできない。

「お腹・・・すいちゃった・・・」
でも今の私にできることは、今、彼が悲しさを紛らせられるようにすることだ。

”今”の彼を。
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