一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「あのね、お姉ちゃん。私、大学受験は諦めようと思っているの」
「どうして!?」
「医学部はお金がかかるでしょう? それにこの体じゃ無理だし……」
「最近、発作もないし、先生は大丈夫って言ってたわよ? お金のことは心配しないで!」

 青白い千歳の手を握った。
 千歳には辛くても生きたいと思えるような夢が必要だ。
 手術だって、夢があるから、受けたいと思ってる。
 お母さんとの記憶がある私より、千歳のほうが辛く、寂しい日々を送ってきた。
 だから、せめて私がお母さんの代わりに、千歳の夢を守りたい。
 生活も――

「千歳は勉強だけじゃなくて、体力をもつけないとね。体力がついたら、手術をして千歳は元気になって大学に通うのよ。ちゃんと準備しておかないと駄目よ」
「でも……」
「大丈夫! 私が有名なデザイナーになって、千歳の手術代も学費も余裕で出せるようになる予定でしょ!」

 千歳に不安を悟られまいと、笑顔を浮かべ、明るく振る舞った。

「じゃあ、千歳。午後から仕事があるから行くわね。勉強、サボらないのよ」
「うん。来てくれてありがとう。お姉ちゃんも仕事、頑張ってね」

 また来るわねと言って、千歳に手を振った。
 そろそろ支払い金額がわかった頃だ。
 私の持っているお金で足りればいいけど……
 千歳には強がってみせた私も、一人になったら心細くて、不安な気持ちを抱え、廊下を歩いた。
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