一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第19話 その一瞬で 【理世】
 きっと彼女は、まだ俺をリセだと思っている。
 本当の自分は、麻王(あさお)理世(りせ)
 乾井(いぬい)の悪人ぶりなど、まだ可愛い。
 本当の悪人は、悪い顔をしないで、欲しいものを手に入れる俺のような男のことを言うのだ。

「……世、理世! 聞いているのか」
「聞いてますよ」

 ――適当にね。 

 父は俺に説教をするつもりなのか、麻王(あさお)家本邸に、俺を呼びつけた。
 仁王像のように玄関で待ち構えていた姿を見て、なんの話をされるのかすぐに理解できた。

「女装をやめろと言ったはずだ」

 リセの格好で来たことが気に入らなかったらしい。
 女装は趣味ではないが、役に立つ。
 特にリセの格好をしていると、相手が油断してくれる。
 麻王理世だと、相手は身構え、話す前から警戒されてしまう。

「この姿は仕事の一環だって、以前に言ったはずだけど?」
「そうそう。父さん。理世の女装は役に立つ。モデルとしても優秀で助かってますよ」

 珍しく本邸に来ていた兄の悠世(ゆうせい)が顔を出した。
 隣にはモデルのローレライがいるが、いても彼女はなにも話さない。
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