一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 報告しないほうがよかったのか、眠っていた人まで起き上がり、正座していた。

 ――だ、大丈夫かな。仮眠とったのを見届けてから、言えばよかった。

 そう思っていると、事務所のドアが開いた。

「理世。早かっ……え? 啓雅(けいが)さん?」

 現れたのは理世ではなく、啓雅さんだった。
 恩未さんが啓雅さんの姿を見て、すばやく前に出た。

「INUIグループの乾井専務ですよね? こんな早朝から、アポイントメントもなく、なんのご用ですか?」
「清中琉永がいるだろう」

 逃げるべきだったのに、足が動かず、逃げられなかった。

 ――怖い。どうしよう。

「どこだ! 仕事前にわざわざ寄ってやったんだぞ!」
 
 啓雅さんの声が響く。
 水色のシャツにノーネクタイ、既製のスーツ姿。
 啓雅さんは不躾にじろじろと事務所内を眺め、そして私を見つけた。

「この間は、よくも恥をかかせてくれたな」

 私に仕返しに来たのだとわかった。
 あのまま、黙って引き下がるわけがないと思っていた。
 千歳(ちとせ)は転院が決まり、その日のうちに大きな病院に移された。
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