一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 工場を救うため、父はある決断をした。

『実は借金がある。ちょうど借金を肩代わりしてくれる人が見つかった。清中繊維の社員のために、協力してくれ』

 協力と言えば、聞こえがいいけど、実際は娘を人身御供にして、借金の肩代わりをしてくれた人に嫁げという命令だった。
 
『社員たちは、お前が小さい時から、知っている人たちばかりだ。見捨てないよな?』

 夢を諦めたくなかった私は、他に方法がないのか、父に聞いた。
 けれど、父は他の案を考えてくれずに、お見合いを拒んだ私を冷たい人間だとなじった。

『おいおい。社員たちの家庭がどうなってもいいっていうのか? 家を買ったばかりの社員はどうなる。まだ子供が小さい社員だっている。それをお前も知っているだろ?』

 お前のせいで、みんなが不幸になる――そう言われて、私は断り切れなかった。
 そして、父は私が断れないよう他にも条件を出して、脅してきたのだった……

 ――どこまで父は私を苦しめるのだろう。

 喉の奥が痛み、涙がにじむ。
 私の望みは、責められるくらい贅沢なものだったのかな。
 でも、私には見捨てられなかった。
 社員も妹も。
 
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