一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 理世の手腕によるところが大きく、新店舗は全国の百貨店に展開し、客層を広げていた。
 カフェの店内に置かれた雑誌にも載っている。

『シンプルな服だからこそ、特別な一枚を』
『幅広い年齢層に似合う服』
『何年たっても褪せぬ服を』

 なんてキャッチフレーズが並んでいた。
 そして、その隣の雑誌は週刊誌――ちらりと見えたのは、『Fill(フィル)』の文字だった。

「え?」

 気になって、週刊誌に手を伸ばした。
 その見出しには【『Fill(フィル)』の貧乏デザイナー、麻王グループの御曹司と結婚!】と書かれている。

「あっ! お、お姉ちゃん……」
「もしかして千歳。この雑誌のこと知ってたの」
「う、うん……。コンビニで見かけて……」

 それで、理世とうまくいっているかどうか、気にしていたようだ。
 雑誌から、『玉の輿狙いか』『愛のない結婚生活』『誘惑された御曹司!』という文字が見えた。
 ページをめくると、妹の病院代を支払えず、麻王グループの御曹司に近づき、誘惑したということが書いてあった。
 その上、父と継母の夜逃げまで。
 千歳は私を気遣い、雑誌のことを知って気にしていたらしい。

「誘惑なんてしてないのに」

 いつ撮られたのか、理世と一緒にいる写真まで使われていた。
 新店舗とショーを控えているのにブランドのイメージを悪くしてしまったのではないだろうか。
 胸に不安な気持ちが広がっていく。
 
 ――理世と『Fill(フィル)』に迷惑がかかったら、どうしよう。

 啓雅(けいが)さんは私のことをどうでもよくなったと思っていたけれど、彼の嫌がらせは、終わったわけではなく、まだ続いていたのだった。
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