政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「えっと……私の部屋に。それで最初の日に、ベッドの場所はここでいいの? って聞かれて。私どうやって答えたらいいか分からなくて。その時初めて気づいたんです。もしかして、普通は寝室は一緒なのかなって」
「えーと……、寝室別なの?」

 こくん、と浅緋は頷く。
「片倉さんはとても優しいです。でも、距離があるような気がするんです。寝室って普通一緒なんでしょうか?」

 池田はとても困った顔をしていた。
 こんな質問はするべきじゃなかった、と浅緋が悔やみかけた時である。

「園村さん、私は嬉しい!」
「え?」

「園村さんは今までこんな風に、私たちに心を開いて話してくれたこととかなかったじゃない? 私たちが困った時はいつでも手を差し伸べてくれる女神のような人なのに、返せるものが何もないねってみんな、いつも言っていたんだよ」

「そんな……」
「だって、社長に直接色々言えるのは、園村さんくらいだもんねえ。だから、本当に私たち色々助けてもらっていたよ」

そんな風に思われているとは全く知らなかった浅緋である。

「だから、今園村さんが他に相談する人がいないにしても、こうやって相談してくれることが嬉しいの」
「私、困らせてしまったかと……」
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