僕惚れ③『家族が増えました』
三木(みき)さん、ラインとかしてらっしゃいます?」

 逸樹(いつき)の声を(さえぎ)るように理人がたたみかけると、「あ、はい」と返ってきて。電話番号で検索が出来るようにしてあるとのことだったので、手間が省けそうだと理人(りひと)はホッとする。

「じゃあ、あとで僕から探して追加申請出しておきますね。猫の写真はラインで送りますので、承認よろしくお願いします」

 にこやかに笑うと、直人(なおひと)(うなず)いた。

「じゃあ、車に猫を待たせてますんで、僕はこれで」

 言って、直人に会釈をすると、理人はわざと逸樹の後ろを通る。そうして、通り過ぎるタイミングで、逸樹にだけ聞こえる程度の低い声でつぶやいた。

山端(やまは)さん、今度うちの彼女を傷つけるような真似したら、アナタの恋人も同じ目に遭わせますから。覚えといてください」

 わざとスマホを逸樹にちらつかせるようにして手を振って、別の通路を通ってレジに向かう。パンを取るためにしゃがんでいる直人には聞こえていないはずだ。

 別に取り立てて欲しくはなかったけれど、適当に手に取った飲み物をひとつと、直人が棚出ししていたパンをひとつレジに出すと、理人は会計を済ませて店を後にした。

 一応牽制(けんせい)はしておいた。

 車に乗り込んだ際、逸樹が店内から物凄い目で睨んできたけれど、知ったこっちゃない。

 理人はニコッと微笑んで、そんな逸樹に会釈すると、セレストアを後にした。

 逸樹のあの様子からすると、少しは報復できたと思ってもいいかな、と思いながら。
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