ずるすぎる幼なじみと甘々ふたりぐらし。
──ガンッ……!!
あのときの鈍い音は、まだ耳の奥にこびりついている。
『桃っ!』
悲痛な叫びごえで駆け寄ったモモの母親の声と、大声で泣き出したモモの声は、今でも耳の奥にこびりついている。
すぐに病院へ行ったが、おでこがぱっくり割れたモモは20針縫う大けがだった。
これが、俺の一番古い記憶。
あまりにも強烈過ぎて、色、匂いまでも、はっきり覚えている。
毎日毎日、モモのおでこの傷が消えますようにって祈るしかできなかった。
モモの家族は、誰のせいでもないと言ってくれた。
それでも責任を感じる俺に、
『前髪で隠れるんだし、そんなに気にしないでね』
モモの母親はそう言ってくれたが、
モモを見るたびにおでこの傷が気になって、いつしかモモのおでこを確認するのがクセになっていた。
近づく理由をつけては、モモに触れて。
10歳を過ぎても、前髪を上げればわかる傷は残っていた。