買われた娘は主人のもの

待ち焦がれていた彼

 夜になり突然、部屋の戸が開かれた。

 白い仮面、背が高くスラリとした体つき、後ろに撫で付けられた黒髪…

「っ…御主人様…!!」

 エイミは慌ててベッドから降りようとしたが、身体はまだ動かない。

 主人がエイミの頬をそっと撫でる。

「…なぜ…戻ってきた…?」

 彼の声は震え、仮面越しの吐息は荒く、今にもその身が崩れそうなほど辛そうなのがエイミには分かった。

「ご、御主人様に、尋ねたいことがたくさんあって…」

 エイミは弱々しい主人の身を案じながら、どう答えたらいいか分からないままそう言った。

「また私が、お前を無理やり奪おうとしてもか…?」

 主人はエイミにそう尋ねる。
 しかしエイミは大きく息を吸い込み、勢いよく言った。

「っ、御主人様が私を好きだと言ってくださるのなら、私は喜んでお役目をお受けします…!」

 主人は目を見開いた。
 エイミは主人に思いの丈をぶつけるようにそのまま続ける。

「『テイル様』が本心を言うことができないのなら、『御主人様』から私は聞きたいのです、教えてくださいませんか…!?」

 主人は下を向いた。そして消えるような声…

「…もっと早く告げるのだった…」

 そのあまりに小さな声を、エイミは聞き逃すところだった。そして主人はエイミを真っ直ぐに見つめて告げる。

「好きだ…『執事』の姿の自らに嫉妬するほど…!!こんなにも…こんなにもお前を想っている…!それなのにお前は三日も食べず、その衰弱した身体で屋敷まで戻ってくるなんて…!お前に何かあったら、私は…」
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