元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。


 どのような知識も悉く吸収できる頭脳を持った彼は、大学の講義もなかなか気に入っており、少し惜しいとは思った。それでも、残りの人生で今持っている以上の知識を身に付けることはもはや無駄であると判断したのだった。


 そして代わりに、ずっとやりたかったことを始めた。


 ──探偵。

 やったのは、ペット探しや浮気調査を行う探偵ではない。推理小説に登場するような、いわばフィクションの探偵に近い。

 難解な謎を論理的思考で、また時には運やひらめきで解き明かしていく。


 結果を言えば、探偵というものはかなり黒瀬に向いていた。

 元々論理的に物事を考えるのは得意であったし、今まで貯め込んできた知識は非常に役に立った。

 初めは黒瀬のことを相手にすらしなかった警察が次第にに頼ってくるようになるのも、実に愉快だった。

 探偵として他人が解けない謎を解き明かすことで、そこに自分が生きた証拠を刻み付けることができているような気がした。白黒だった世界に色が付いたような気分だった。


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