元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。
令嬢探偵、三人集めて「さて」と言い




 ルシウス・クレイトン

 最初に話を聞くことになったのは彼だ。

 若く優秀な商会長。一対一で向き合うと、先ほど感じた畏怖や魅力が決して勘違いではなかったのだと思い知らされた。



「俺は元々孤児院の出身でして、幼い頃に先代に養子として引き取られました。先代はずっと独身だったため、初めから跡継ぎにすることを目的に引き取ったのだそうです」



 一年前に急死したという先代のことを尋ねると、ルシウスは丁寧に答えてくれる。

 シエラは圧倒されないようしっかりと気を持ち、睨みつけるぐらいの気持ちで彼の目を見た。



「こちらの商会の代表がルシウスさんに変わってから急成長したという話は、私も何度か耳にしました。先代の頃と経営方針は大きく変えたんですか?」

「いえ、基本的には先代の方針を引き継いでいるつもりですよ。ただ、非合理的なところをいくつか削るうちに一気に軌道に乗ったのは確かです」

「なるほど。では、商会の経営について、先代と全く気が合わなかったということはない、と」

「ええ。俺は先代のことを尊敬していますし、拾ってもらえたことに感謝していますよ」


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