元探偵助手、転生先の異世界で令嬢探偵になる。



 ジョシュアは、花を買って飾るということは日課であったが、植物に詳しいわけではないと言っていた。だからスズランの毒については知らなかった。


 同じように知らなかった先代は、菓子で咳き込んだあまりの息苦しさについ花瓶の水を飲んでしまった。咄嗟に飲んでしまったぐらいだから、きっとスズラン自体は萎れるなりして取り除かれた後だったのだろう。

 しかし、好物の菓子を食べてむせてしまい、お茶がなかったから花瓶の水を飲んだというのは格好が悪い。となれば次の行動も何となく予想できる。

 その花瓶は洗い、片付けてしまった。

 こうして、死因となった毒物が見つからなくなってしまったわけだ。



「飲んだ瞬間に症状が出るような毒ではなかったので、日記を書くこともできたのでしょう。つまりこれは──不幸な事故です」



 シエラがそう締めくくったのと同時に、ジョシュアは膝から崩れ落ちた。

 呆然とした様子で俯く。



「……つまりわしがスズランなんかを飾らなければ、あいつは今も。そんな馬鹿な──」



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