・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 他の仕事も抱えている芽衣に甘えるわけにもいかないし。アポイントを取った際、伺うのは私だけと伝えてしまっているからなぁ。味方を連れて行きたいけど、行けないんだよね。

 本社前に着くと、ちょうど玄関前に高級車が停車し。車内から副社長が出てくる姿が見えた。


「ほぉ、あれが副社長専用車かぁ」と繁々眺めている芽衣に「私、ちょっと挨拶してくる」と言い残し、玄関ホールに入って行った副社長の後を追う。


「ちょっと、優羽⁈ 待ってよ」


 芽衣の声を背中に受けながら、副社長の後ろ姿に声をかけた。


「おはようございます。先日はありがとうございました」


 声をかけた私に反応し、振り返った副社長はわたしを見下ろしたまま口を開こうとしない。
 それどころか、軽く首を傾げられ。顔を前に向き直されてしまい、そのままスタスタと行ってしまったのだ。


 あれ?


 思いがけない反応に戸惑ってしまう。おかしいな、確かに副社長は私を見たのに。


「優羽、どうした?」

「うん。挨拶したんだけど、軽く無視された」


 ヘアスタイルも、かけていた眼鏡もスーツ姿を見ても、特に変化は感じられなかったのに。なぜか違和感を覚えた。


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