甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
「西条さん、うちは秘書を置いておらず、私のことは木島が管理してましてね。今後、西条さんのことも、木島が担当しますので、宜しいでしょうか」
「勿論です。ただ、それでは木島さんも大変でしょうから、佐々倉さんは、いかがでしょうか」
「娘ですか?まだまだ頼りないところばかりで、ご迷惑になるかと」
「大丈夫ですよ。いいですか?佐々倉さん。もしダメでしたら、他の方にお願いしますが」
不敵な笑顔は、断る選択肢はないよね、って言ってるようなもんじゃないですか!
それに、もし、代わりに他の女性社員が傍にいることを想像すると…
胸がもやもやする。
「わかりました。宜しくお願いします」
「宜しくお願いしますね、佐々倉さん」
あの夜の甘い想い出が、こんなことになるなんて…
「では、私はこれで失礼します」
打ち合わせが終わり、湊さんが帰ると聞いてほっとした。
お父さんが、見送るのに部屋を出ようとした時、
「見送りは結構ですよ。あぁ、じゃあ佐々倉さんだけ」
「そうですか。じゃあ結羽、お見送りして」
「は、はい」
お父さんに言われて、私は湊さんを外まで見送ることにした。
私が黙っていると、湊さんがふっと笑いながら、
「何もしないよ。そんなに緊張しなくても」
「えっ?」
「来週、社長達がうちの会社を訪問するらしい。結羽も一緒においで。俺が仕事している場所を見て貰いたいんだ」
「私が行っても…」
「見て欲しいんだ。だから来て。それに俺の管理もしないとね」
真剣な目に見つめられて、断ることも出来なかった。
「わかりました」
「じゃあ、来週待ってるから」
小悪魔的な笑顔で私を見下ろし、帰って行った。
あぁ、何てことなのよぉ!
木島さんのこともあるというのに、頭が痛くなってきた。
素敵な一夜の想い出のはずが、私はあの夜の見返りに、今日の様子だと弄ばれるような気がする…
ただ…
私は、それを突き放すことが出来ないくらい、湊さんに惹かれ始めている。
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