再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません
月日は流れて、七月の後半から夏休みが始まった。

しばらく学校に行かなくていいと思うと、憂鬱な気分は随分と軽くなった。

誠稜高校は偏差値が都立の中で高い難関高校の一つに数えられている。

授業のレベルは高いけど、赤点を取ることなく期末試験をパス。

その結果、補習のない悠々自適な夏休みを迎えることが出来た。



七月の末、悠くんも大学の試験を終えて夏休みを迎えた。

その日、一緒に映画を観に行こうと誘われた。

私自身観たい映画があったけど、悠くんも観たいものがあるかもしれない。

ラインで何を観ようかと尋ねれば、私が好きそうな映画があった、と見たかった映画のタイトルが挙げられた。


私が恋愛ものの小説を読むのが好きだと話したことを覚えてくれたみたい。

その映画は私が愛読している作家の作品が実写化されたものだった。

その映画に大好きな俳優さんの伊賀(いが)(りつ)くんが出演する。

数年前に特撮のマスクライダーシリーズで俳優デビューを果たした律くんは、瞬く間に人気俳優の地位まで駆け上がった。

今ではメディアで彼を見ない日はないと言っても過言じゃない。



映画は楽しみだ。

でも、それ以上に悠くんとお出かけ出来ることが嬉しくて、家族との遠出を楽しみにする子どものようにそわそわしている私がいた。

前日の夜、部屋にあるクローゼットから服をベッドの上に並べては、何を着ようか沢山迷った。

結局、悠くんの誕生日と同じように可愛く着飾る勇気が出せず、テーパードパンツとTシャツというシンプルな格好になってしまった。
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