僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

 あの日を含めて3晩を、僕はこの洋間で過ごした。
 で、今日。ダウンして丸4日目。

理人(りひと)……」
 昼間はちゃんと大学に通っているはずの葵咲(きさき)ちゃんが、昼前に帰ってきて。

 僕がいる洋間の扉を開けるなり、倒れ込むように僕に抱きついてきた。

「葵咲っ!?」

 くっ付いたらダメじゃないか、って言おうとして、僕は葵咲ちゃんの身体がとても熱いことに気がついた。
 体調が大分回復している僕は、ぐったりとした様子の葵咲ちゃんを抱きしめながら、最悪の事態が起こったことを悟った。

「しんどいの?」
 聞いたら「……ごめんなさい」とか。

 内心では「だから言ったのに」って思った僕だけど、そんな酷いこと今の葵咲ちゃんには口が裂けても言えない。

 そもそも!
 インフルエンザ(こんなの)を持ち帰った僕が悪い。

「謝るのは僕の方じゃないか」
 ギュッと小さな身体を抱きしめて、僕は心底自分の不甲斐なさを呪いたくなった。

 でも同時に、僕自身が大分回復した後で良かった、とも思ったんだ。
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