僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「だっ、断じてっ! 狙って裸エプロン(こういう格好)をしてるわけじゃないっていうのだけは……その……わかって……ほしい……です」

 語尾がゴニョゴニョと小さくなって、堪りかねたみたいに私からふいっと視線をそらすの。

 もぉ、何これ! すごくキュンキュンしちゃうよ!?

理人(りひと)っ! 大好きっ!」

 私は我慢できずにそんな理人にギュッと抱きついてしまっていた。

「き、さきちゃ……?」

 理人がびっくりしたみたいに私に呼びかけてくるけれど、もう、どうしたらいいの!ってくらい彼の全てが愛しくて切ないくらい。

 でも――。

「キミが裸エプロン(こういうの)好きだったなんて僕、知らなかった……。今まで気付いてあげられなくてごめんね」
 こんなことなら隠れなくても良かったね、とか。

 ち、違うからっ!!

 盛大な勘違いを残して、暑い暑い1日が終わりを告げようとしている。

 エアコン、いつ直るんだろう?
 それより理人の誤解はどうやって解こう!?

 足元に擦り寄るセレを見つめながら、理人にギュッと抱き返されて口がうまくきけない状態のまま、私は色々思いを巡らせる。

 ダメ。暑さと酸欠と理人の肌の温もりで、頭がぼんやりしてきちゃった――。

 丸山(まるやま)葵咲、池本(いけもと)理人と同棲を始めて以来最大のピンチかも知れません。


     END
    (2020/07/16ー7/22)
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