名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~

 もしも、ただの勘違いだったら、好きが駄々洩れているのは、絶対にマズイのに自分で自分を制御できない。

 マウスを持つ手が緊張しているのか、上手くポイントを合わせられない。
悪戦苦闘していると朝倉先生の手が私の手の上に重なった。
 手の熱を感じる。

 朝倉先生の手が重なり、焦っりまくって名前を呼んだ。
「あ、朝倉先生」

「夏希さん、呼び方」
 
「……翔也……先生、あの手が……」

「手が?」
 と言って、手を重ねたまま聞き返す。
 朝倉先生は、いじわるだ。
 決して、朝倉先生の手を払い除けたりしない事を分かっていて、聞き返すなんて……。
 
「手が……重なっています」
 
「手を離したくないんだ」
 
 重なる手、耳に届く声、心臓が早鐘を打つ。
 視線を上げると朝倉先生の優しい瞳が私を捕らえた。
 その顔がだんだんと近づき、唇に熱を感じる。
 
 嘘みたい、朝倉先生とキスをしている。
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