名無しのヒーロー ~シングルマザーは先生に溺愛されました~
 重たい体を起こして、美優の朝ごはんを食べさせ、自分の食事を取った後、搾乳を始めた。
 母乳が溜まって胸がこんなにパンパンでコチコチになるのかと思うほど張っていた。

 痛みをこらえて、搾乳をする。すると今まで見たこともないような、ドロリとした腐った練乳のようなものが絞り出された。

 「ナニコレ?」
 明らかに様子がおかしい、体の重だるさの症状も増している。不安になって熱を測ると38.2℃も体温があった。
 体調が悪いからこんな事になったのか。と搾乳機の中にある物体を見つめた。
 朝倉先生に今日の打ち合わせの延期を伝えるメールを送る。すると電話の着信を知らせるバイブが震えだし、画面の表示は、朝倉先生からの着信を告げていた。

「はい、谷野です」

「おはようございます。谷野さん、寝ていたかな? 今、大丈夫?」

 久しぶりに聞く朝倉先生のイケボ、熱とあいまってボーっとする。

「朝倉先生、すみません。今日、お時間頂いていたのに何だか急に熱が出てしまって、お日にちの変更可能でしたらお願いします」
 
 いくら熱があっても仕事の事はちゃんとして迷惑を掛けるのは最小限にしないと……。でも、会えなくなったのは、残念だな。
「熱は、どのくらいあるの?」

「それが38℃を超えてしまって」

「美優ちゃんもいるのに大変じゃないか、これから行くから寝てなさい」

「えっ!」
 と、言った時には、既に電話は切れてしまっていた。
 
 朝倉先生が来る……。
 こんな、熱もあってボロボロの時に……。
 あああぁあああ!
 また、マイナスだぁぁぁ!
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