匣庭 -ハコニハ-
1.気付き

ぼぉっとする意識の中、目に差し込んできたのは月の光であった。その眩しさに驚いたのか私は一気に覚醒した。

(ここはどこだ…?)

私はベッドに横たわっており、洒落た小さなキャビネットが隣にあった。部屋は白い壁に囲まれており、右手には窓。その反対には鉄扉。窓から部屋いっぱいに月の光が差し込んでいる。とても明るい。

いずれにしても、全く見覚えのない場所だ。

いてもたってもいられず、重い頭と体をもたげ、ベッドから足を下ろし、なぜここにいるのか考え出した。

(ここは私の知っている場所ではない。だったらなぜここにいるんだ…?)

…………………。

私 は ………?

このことに気付き、一気に血の気が引いた。
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