すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
「えっ、ちょ、(やにゃ)……(がわ)っ、な、んでっ――?」

 実家住まいの柳川(やながわ)は、お店から徒歩圏内に家があるはずで。
 私のアパートに向かうタクシーに乗り込んだりしたら、確実に遠回りになっちゃうよ?


「んな、フラフラの状態のヤツ、ひとりで階段上がらせられっか。……怖すぎだろ」

 そう吐き捨てた柳川を思わず見つめたら、怒ったようなその横顔にドキッとしてしまう。


 あー、これ。絶対呆れられてるね。
 好きな人にこんな顔させちゃうとか……ホント最悪!


「ごめ、なさっ」

 迷惑かけて。


 薄暗いタクシーの後部シートに、大好きな男の子と2人きり。

 そう意識した途端、こんなに重苦しい空気だと言うのに心臓がバクバク言い始めて。

 走り出した車の揺れに翻弄(ほんろう)されたみたいにゆらりと身体を(かし)がせたら、頭をそっと引き寄せられた。

「え……?」

 驚きの声をあげる私なんてお構いなし。
 そのまま自分の肩にすがらせるように抱き寄せてくれると、柳川がポツンとつぶやいた。
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