すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
(やな)(がわ)……?」

鳴宮(なるみや)っ、片想いしてる相手が居るんだろっ? なのに俺……お前にあんな無理矢理……」

 言って、柳川が自分の唇に手の甲を押し当てたのを見て、私、やっと理解した。

 それと同時にあの濃厚なキスを思い出して、ぶわりと顔に熱が昇る。

「あ、あ、あ、あれはっ、……わ、私も悪かった、しっ。だから……っ」

 ――大丈夫、気にしないで?

 そう続けたかったのに。


「忘れて……くれるのか?」

 どこかホッとしたようにそう問いかけられて、私は胸の奥がチクン、と痛んだ。

 柳川の気持ちを(ほぐ)したい一心で告げた、「片想いの相手がいる」という話。

 その対象が柳川だと気取られてはいけないと思って曖昧にぼかした結果がコレ。

 私がやることはいつだって空回りで、いつだって最悪の事態ばかり招いてしまう。

 あの告白のせいで、大好きな柳川に距離を取られてしまうだなんて……。

 こんな事なら言わなきゃ良かった。
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