すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
柳川(やながわ)に何があったのっ?」


 薬学部同期で同じゼミ――天然医薬資源学研究室――に所属の柳川寛道(ひろみち)には、先の興奮からもお分かりのように、私、入学してすぐのオリエンテーションの時に一目惚れして以来絶賛片想い中。


 地方から出てきて、友人なんてまだひとりもいなかった折。
 広い学内で迷子になりかけていた私を、「俺も新入生だから一緒に行こうぜ」って会場まで同伴してくれたのが柳川だった。

 最初話しかけられた時は、20センチ以上の身長差に正直ひるんだけれど、話してみるとすごく気さくなヤツで。

 緊張でガチガチに固まっていた私の心を解きほぐすみたいに、大好きだという粘菌類の話を聞かせてくれたのを思い出す。


 私も子供の頃から粘菌に心奪われている人間のひとりだったから、「何この話の分かる人!」って意気投合して沢山話して。
 気が付いたらお互いの連絡先を交換するに至っていた。


「ほら、言凛(ことり)、ずっと言ってたじゃん? 柳川には片想いの女の子がいるから自分の入り込む余地なんてないって。――柳川がね、その子と今朝……」


 私が柳川のことを好きだってハッキリ自覚した時には、柳川の方から「実は俺、ずっと片想いしてる子がいてさ」って打ち明けられた後で。

 そっか、うまくいくといいね、なんて心にもないことを言ったのを思い出す。


 それでも1年の間は良かったの。
 その子は学内にいなかったから。

 それが、この春――学部は違うけれど柳川の片想いの相手が同じ大学に入学してきてからは最悪だった。

 柳川の横を歩く、自分と同じぐらいの身長の、ホワホワした可愛らしい女の子を思い出して、私は履いていたスカートの生地をギュッと握りしめた。
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