すてられた想い人をなぐさめたら、逆に私がひろわれました!?
 柳川(やながわ)の言葉に、私は思わず彼を仰ぎ見て。

 至極真剣な目で私を見下ろす柳川の視線とかち合って、トクンッと心臓が跳ねた。

「お前が本当に好きなのは誰だよ?」

 ハッキリと言葉にされた訳じゃないのに「俺じゃないのか?」って問いかけられている気がして、私は思わずふらりと立ち上がって。

 そんな私にそのさんがまるで無意識に。
 咄嗟(とっさ)にそうしてしまったみたいに私の手を掴んだけれど、私はその手をもう一方の手を添えて、そっと振り解いた。

「そのさん、ごめんなさい。私、そのさんとはもう、()()()()()続けられません」

 敢えて「お付き合いを」とは言わなかった。

 だって私とそのさんの恋人ごっこは、最初から嘘っこだったもの。

 1度だって私、そのさんと〝その先〟を夢見たりしなかった。


言凛(ことり)……ちゃん」

 そのさんが眼鏡の向こう、瞳を見開いて私を見つめて。

 私はそのさんを見つめてもう1度「ごめんなさい」ってハッキリと彼を拒絶した。


「……そっか。最初から無理があったもんね、俺ら。(こと)……()()()()がそう決めたんじゃったら俺はもう何も言わんよ。けど――」


 そこでそのさんも立ち上がってじっと私を見つめると
「ゼミで気まずくなるんは嫌じゃけ、次に会ったときは……お願い。今まで通り話しかけて? 俺も極力頑張るけぇ」

 そう言って、どこか辛そうに八重歯を見せてニコッと笑った。
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