若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 二代目社長を引き継いだばかりのマイルはげんざい、海外進出をもくろみさまざまな業界にアプローチしている。国内業界五位と、日本の海運四天王からははずされているキャッスルシーだが、目の上のたんこぶになっている鳥海海運を引きずり下ろそうとすればできなくもないと考えていた。高齢の社長が年老いてから産んだ一人息子、カナトを後継にするのは時間の問題といわれている。若き海運王という称号を持つ彼は貴公子然とした姿で高専時代から目立っていたが、実務経験でいえばマイルとそうは変わらない。海運業界で生きることを定められた二世という共通点ゆえ、彼にできて自分にできないことなどないと、知らず知らずのうちにマイルは先輩でもあるカナトのことをライバル視するようになっていた。
 根底には義母の奈月が死の間際まで鳥海海運を憎みつづけていたということもあるのだろう。もしかしたら彼女に仕組まれたのかもしれないと思わないでもない。愛するひとを奪われ娘と放り出されて逃げるように日本へ戻った彼女はマイルに復讐を託そうとしたのだから。
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