若き海運王は初恋の花を甘く切なく手折りたい
 若い頃からのビジネスパートナーとして西島ともつきあいを持っている彼は、マツリカの父である長谷とも親しく、彼の死後路頭に迷った母を後妻に娶ったのだ。母はその後大病を患い彼女が二十歳になる前にこの世を去ってしまったが、義父は海外の学校へ進学したマツリカを放り出すこともせず、淡々と仕送りをつづけてくれた。就職先を鳥海海運現地法人の子会社にあたるBPWに決めた娘に「やっぱりナガタニの娘だなぁ」と淋しそうに笑いながら送り出してくれて以来、お互いに顔を合わせていない。事情を知る西島が親孝行しろとせっつくのもわからなくはない。

「……それも、会社命令ですか?」
「いや、ぼくのお節介」

 きっぱり言い切る西島に絆されて、マツリカも「わかりましたよ」と素直に観念するのであった。
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