二人の幼なじみに愛されてます

それは反則だろ

もう逃げないって決めたのに、その決意はあっけなく崩れてしまった。

帰る準備をしているときに、名前を呼ばれた。その声は顔を見なくてもわかるほど、聞きなれた理央の声だ。

理央の顔を見るなり、荷物を置いたまま教室を飛び出した。

私の決意は砂のお城並みに脆かった。

逃げるつもりはなかったのに、一度走り出してしまったら足を止めることはできない。見つからない所まで行こうと思っていたけど、後ろから理央が追いかけてくるのがわかった。

どうしよう。なんで走っているのかもわからなくて、廊下を全力で走り回った。



「愛乃、待てって」



理央の声がだんだんと近づいてくる。

私じゃ理央の足には勝てない。逃げ切ることはできない。

やみくもに走っていたら、廊下の突き当りにきてしまった。美術室の扉に手をかけるも、鍵が閉まっていて扉は開かなかった。
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