極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
五章 もう一度、つないで
 水族館デートから一週間。繭と樹の間には微妙な距離が生じていた。その原因を作っているのは、間違いなく繭だ。樹のほうは告白を無視したも同然の繭に怒ることもなく、紳士な態度を貫いているのに……そんな彼を不自然にさけて、彼を傷つけていることも繭はわかっていた。でも、どうしていいのかわからないのだ。

(告白……すごくうれしかった。でも、私は樹くんに大切にされる資格がない)

 旬太のことを正直に打ち明けよう。何度もそう思ったが、彼を前にすると口ごもってしまう。打ち明けて嫌われてしまうくらいならいっそ、ここですべてを終わりにしようかとすら思う。

(そうしたら、好きだと言ってもらえてキスをした。幸せな思い出だけを残せるのに)

 堂上法律事務所の古びた天井を見あげて、繭は大きなため息をこぼす。すると、珍しいことにメロが慎太郎のそばを離れ繭のもとへやってきて「ニャアン」と鳴く。繭はふっと口元を緩ませた。
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