極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
一章 シングルマザーは理想の人生!
 歴史の重みを感じる古書店や、昔から変わらぬ味の名店が並ぶ情緒あふれる町、神保町。その片隅に建つ、築三十二年の雑居ビルの三階に『堂上(どのうえ)法律事務所』はオフィスを構えている。従業員は弁護士で所長の堂上慎太郎(しんたろう)とパラリーガルの妹尾繭のふたりだけだ。

「今日もヒマですねぇ。タロ郎先生、メロと遊んでばっかりいないで営業活動でもしてきたらどうです?」

 事務所で飼っている三毛猫のメロとじゃれ合う慎太郎に繭は仁王立ちで詰め寄る。タロ先生は彼のあだ名だ。近所に大勢いる慎太郎の茶飲み友達がみな彼をそう呼ぶので、いつの間にか繭にもうつってしまった。四十六歳の慎太郎は個性派俳優のような渋さがあり、一部の枯れオジ好きの女子にはきっと需要があるだろう。
 その彼だが、こう見えて経歴はすごい。国内最高峰の国立大学の法学部を卒業しており、弁護士試験は一発合格。かつては日本四大事務所のひとつに勤めていた。
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