極上悪魔な弁護士が溺甘パパになりました
二章 あの日の秘めごと
 二年前、三月。

 繭と職場の先輩である美智子(みちこ)は、ランチ休憩をお気に入りのカフェで過ごしていた。少し暖かくなってきたからと意気揚々でテラス席に座ったのだが、これは失敗だったかもしれない。繭の白い頬に吹きつける風はまだ冬のものでひやりと冷たい。美智子はミルクティーのカップで両手を温めながら、繭の大学時代に起きた不幸な話を聞いている。

***

 繭とありさは高校時代からの親友だった。同じ大学に合格したときは手を取り合って大喜びしたし、繭のゼミ仲間である卓也とありさが付き合いはじめたと聞いたときは心の底から祝福した。ありさとも卓也ともずっといい関係が続いていくと信じていたのに……。

「親友の彼氏を寝取るなんて、おとなしそうな顔してよくやるわ~」
「でもさ、男って繭みたいな一見清楚そうな女に騙される生き物よね」
「一見って、それ悪口じゃん!」

 そう広くもないゼミの教室で、コソコソとささやかれる自分の陰口を繭は聞こえないふりでやり過ごしていた。

(私はなにも悪いことはしてない。下を向く必要なんてないもの)
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