彼と私のお伽噺

「咲凛、俺と結婚して、どこまでも一生ついてこい」

 黒褐色の瞳が、私を間近でじっと見下ろす。


「返事は?」

 強い口調で問われて、小さく頷く。


「一生、捨てないでくださいね?」

 昴生のことを見上げて確かめるように訊ねると、彼がふっと口角を引き上げた。


「捨てるわけねーだろ。死ぬまで一生、俺のものだ」

「なんか、それも怖い……」

 笑ってつぶやいた私の唇に、昴生さんが今度はそっと優しくキスを落とす。


「家に帰ったら、すぐサインしろよ」

 昴生さんが、子どもにするみたいに私の頭をぐしゃぐしゃっと無遠慮に撫でてくる。

 私を見つめる昴生さんの表情からは、機嫌の良さが伝わってきて。

 物言いはエラそうだけど私の返事を喜んでくれてるんだと思ったら、胸の奥がきゅっとした。

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